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《 プレクトラム バンジョー / 5弦ネックの解体とロッド調整 》 

5弦バンジョーのネックをまず解体。ネック幅が狭くなることから、トラスロッドの埋め込み位置が変わってきます。

◆ 指板を剥がす

  写真のネックは「カスガ製」、既にフレットは取り除いてあります。
  ←作業に使用する道具は「水」、「雑巾」、「アイロン」そしてスクレーパー(一種のパレットナイフ)です。
指板を水でたっぷり濡らし、更に水を含んだ布で覆います。
↓布の上から熱したアイロンを当て接着剤を溶かしていきます。
 
 

←作業はこんなイメージ・・・・しかし実際には結構力が必要で、アイロンは手に持たずネックをしっかりと押え、右手で隙間にスクレーパーを差し込んで剥がしていきます。
↓スクレーパーを差し込んだところ。
↓間もなく指板が剥がれるという最後のスクレーパー作業・・

 
  およそ20分程度で指板は剥がれ、錆びついたトラスロッドが露出しました。
ロッドは4か所で4つの木片で固定されています。この固定は他のカスガバンジョーにも見られる方式なので当時の一般的な仕様だったのかも知れません。

◆ トラスロッド溝を埋める

 

固定4か所の木片を取り除きロッドを取り出しました。
なお4か所のうち3か所の木片は木口面を上下にセットされていました。

 

4弦の幅に加工することでロッドの中心線が変更となり、ロッドのインストール位置も変わってきます。以下の手順で加工します。
1.ロッド溝を一旦同じマホガニー材で埋め戻します。
2.ロッド溝の深さを確認し、アーチ状に変化する溝に合わせて埋め木を加工します。写真は溝の形状をプロット罫書したところです。

  プロットした形状にほぼ仕上がりました。
ただ溝幅の内径が6ミリ~7ミリ前後と均一ではないため、埋め木の厚みを部分的に少しずつ調整する必要がありました。
  隙間なくクランピング・・・・
  一応埋め木はしっかりと接着できたようです。
 

埋め木の出っ張った部分を鉋とペーパーで平らにしましたが、溝の幅が一様ではなかったため隙間がはっきりと確認できます。

従って、マホガニーパテを隙間に充填。効果のほどはわかりませんが新しい溝を彫った時点で見栄え的には良くなるはずです。(下の写真2枚)

 
 

150番と180番で研磨、まあ良しとします。

◆ 新しいトラスロッドの溝をつくる

  ロッドエンドが収まる溝の位置も変わってきます。
下の写真4枚は溝の修正、片側を木片で埋め、もう一方を削る作業を示しています。
 
 
 

さて、新しいトラスロッド溝の加工です。
ルーター専用ガイドをネック上にセットし、トリマーを準備。
深さの目標はネックエンド側で8ミリです。

 

ロッドの直径は5.2ミリという不思議なサイズ、使用するビットサイズは5ミリですがテストをするとこれがぴったりと収まってしまいます。

トリマー作業は2~3ミリ単位で少しずつカットしていきます。

 

大失敗!!!
「さあ、終わった」とルーターを取り外すと何とビットが貫通し向こう側が見えている・・・
気を取り直し、長さ約19センチ、厚み5.5ミリのメープル材を準備し下の写真(4枚)のように貫通した部分を修復しました。実はギターやバンジョーのネックにはこういった3ピースネックもあるのでまあ良しとします。

 
  左上の大きく飛び出した部分を2ミリほどに整形してから接着します。

◆ 失敗したロッド溝の再加工

 

失敗の反省に基づき、今回はルーターガイドのナット側に1センチほどの木片を置き、ヒール側と同じような「アール」を持たせました。

ルーター作業の対象は貫通した約20センチほどのメープル材の部分です。

  ルーター作業終了後、ネックの反対側をある程度ヤスリで削っておきます。

(いずれ塗装は全てやり直すのでその時にもう一度サンディングします。)
  ロッドの曲がり具合を調整。
 

写真の手書き数字で分かるように最初の溝が18ミリ、新しい溝が15ミリとなっています。
つまり底面には3ミリの段差があるので、その段差解消のためにテーパーのある木片で平らな底面に修正しました。

ようやくトラスロッドの新しい溝が出来上がりました。

◆ トラスロッドのインストール

 

①ロッドが接着剤で固まらないように前回はロッドをストローに入れてからセットしましたが、今回はロッドに「蝋(ワックス)」をたっぷり塗り付けてからセットしました。
②ロッドの「押え木」には硬いメープル材を使用、写真のように3ピースとしました。

下の4枚は、余分なボンドを拭き取ってからクランピング、翌日ネックフェイスを#150と#180で研磨しました。これでロッド装着完了です。

 
 

◆ トラスロッドの調整とネックフェイス

この段階でネックを軽く逆反り状態にしてから、改めてネックフェイス(表面)を平らにします。こうすることで弦を張った時のテンション増にしっかり対応できるネックフェイスとなります。
 


順反り気味のネックを逆反り状態にしましたが、その結果ネック自体に「ねじれ」、つまりネック表面が平面ではなくなってしまいました。
恐らくロッドとネックとの関係が正しい位置関係(セッティング)ではなく、曲がったロッドが伸びるときのテンション(力)がネックに直接影響を与えたものと思われます。 いずれにしても矯正しなくてはなりません。

 

ネック表面全体を研磨し平らにすることで矯正していきます。

ねじれ矯正のための特定箇所は赤サークルで示した部分です。その部分を意識して研磨します。

  ねじれは矯正出来ましたが黄色サークル部分を相当研磨してしまいました。 ナットのラインを見ると研磨した結果がわかります。

このずれはペグヘッドを加工する時に修正します。