《 マンドリン/ボディ組立その1 - ダブテール加工、バックボード接着》 

◆ 接合部の考察

マンドリンはアーチトップ形状ということもありネックとボディの接合はやや複雑です。   ここではダブテールジョイント(蟻溝接合)の構造を説明します。
 

ネックエンドの接合角度は「6度(84度)」のピッチでカットします。その結果ネックと指板はイラストのような角度でブリッジ方向にセットされます。
セットされた指板を下から支えるため2つのパーツを用意。
一つは指板エクステンダーというサポートパーツ、2つ目はキャップあるいはインフィルというボディとネックの隙間を埋めるパーツです。

 

蟻溝構造のイラストです。 赤丸で囲んだイラストは蟻溝が絞り込まれた形状でアコスティックギターでは一般的な構造です。

なお、この参考書はV字型のネックヒールをそのままボディに埋め込むという方式を採用しています。そのため先にヒール部を整形したため赤丸(下段)のような「欠け」が生じることになってしまいました。

 

ボディ側が35㍉、ネック側が45㍉なのでイラストのようにネック側が約10㍉ほど飛び出し指板とボディの間に隙間が生じます。

従って最初に説明したように追加のパーツでその隙間を埋めるわけです。

◆ テンプレートとネックのサポートパーツ作成

 

ダブテール加工テンプレート。左がボディ側、右がネック側

下はサポートパーツ2点

 

◆ ダブテール加工(ボディ側)

  バンドソーで写真のようにノコ目を入れます。
 

ノコ目をノミで粗削りしてからヤスリで仕上げて行きますが、削り過ぎると事後の修正が面倒なので罫書き線を残す程度で取り敢えずストップします。

下の2枚はヤスリ掛けの最終調整が終わった状態。

 

◆ ダブテール加工(ネック側)

 

ネックエンドに罫書き。

*ネックの整形前に行う作業、整形前であれば専用ZIGを準備した上でバンドソーが利用できると思います。

 

バンドソー処理は危険なのでノコギリで切り込みを入れてからヤスリで整形していきます。硬い材料に加え整形済みヒールなのでアール面加工が大変です。

↙↓ほぼ整形作業が終わりましたが・・・・
(プロの製作家は専用ZIGとルーターで簡単作業)

 

◆ ダブテールの接合チェック

 

最初は全く入らない状態 ⇒ ちょっと入るがきつい状態 ⇒ きつくなってきたら中心線を意識しながらネック側を研磨して調整。
この作業はちょっと削ってはチェックの繰り返し、削り過ぎたら面倒です。

セットした後、中心線が正しいかどうかの確認。ウクレレ同様、写真のように「3点」にスケールを当てて確認、OKです。

 

◆ キャップ(インフィル)の取り付け

  今度は「キャップ」とトップボードの接点位置を決めます。
ネックをセットした状態でキャップを当て接点位置を確認し、カッターナイフで切り込みを入れます。
 

←切り込みに合わせノミで不要なトップボードを削り取ります。

取り敢えず削リ終わった状態、接着時には付着物等全て除去します。

↓キャップが収まりました

 
 

ダブテールの接着面は側面2か所とアール部分の計3か所です。
先端部分はあえて隙間を確保します。この遊びがないと手作業での工作はほぼ不可能です。

*うーん、やはり出来栄えは今一、側面処理はまあまあですがアール面は隙間が相当あります。ヒールの整形前の作業であったらもう少しうまく処理できたと思うのですが、あとで木片(shim)で隙間を埋めてみます。

 

ここで問題発生!

キャップの高さ(厚み)はネック平面と同一レベルになるはずだが、高さが足りないことに気が付き、写真左側のキャップを改めて作成。ついでに象牙を装飾として貼り合わせました。

 

なお、ネックを外す時は写真のようにハンマーで叩かないと取り出せません。これぐらいの「きつさ」が求められます。

ネックを装着した状態でキャップをボンド接着します。
↓10分程度したらネックを取り外し、改めてクランプ接着します。

 
 

◆ ネックアングルの確認

  ①フィンガーボード(厚さ4.5ミリ)の上にフレットに見立てた木片(1.5ミリ厚)をネックにセットします。計6ミリの高さ。
②ブリッジ(高さ18ミリ)を所定の位置にセット
③仮想指板に固定された長尺スケールはフレット(頂点)レベルを意味します。
 

スケール先端は高さ18㍉のブリッジに接しています。
実際には弦とフレット間には12F位置で2~3㍉のクリアランスあり。この数値はブリッジ位置では4~5ミリになるので、ダブテール接合、具体的にはネック位置を押し下げ、ブリッジ位置で4~5ミリの隙間が確保できる位置で接合する必要があります。

*なお、マンドリンブリッジはスクリュー機能で約5㍉程度の高さ調整が可能。

◆ バックボードの接着

 

トップボードと同じ作業です。ライニングをボンド接着します。

乾燥後クランプを取り除き・・・

↓リムから飛び出しているライニングをカンナとヤスリで平らにします。

 
 

さて、バックボードを接合する前にネックの取付位置を決定しなくてはなりません。

まずブリッジの高さをスクリュー調整で18ミリから「20ミリ」としました。これにより調弦時に2ミリのバッファが確保できます。

 

再びネックを取り付け、前回と同じようにスケールをあてがい以下を確認。
①フレット(頂点」ラインをブリッジから「3ミリ弱」の位置に合わせる。
②弦とフレット間の距離は12Fで2ミリ、ブリッジ位置で3ミリという計算ですが・・・

この取付位置でヘッドブロックからネックヒールの飛び出した部分を削り、バックボード接着に備えます。

 

最後の見納め、あと数分でブロック、トーンバーとかが見られなくなります。

ラベルもしっかり糊付け!

 

「坊主釘」もヘッドとテール2か所に打ち込み、接着位置を数回チェック・・・

さあ、タイトボンドを塗った・・・・

 

←スプールクランプを目一杯使用、渦巻き部分はカムクランプを・・・

隙間なくとはこういうこと・・・

↓ネックヒールとバックボードが接合する部分

 


 

今までのボディ製作をまとめるとイラストのようになります。
この最終形を頭に入れながら作業手順を考えていけば大きなミスは防げるはずです。


 

ボディ組立OK!!!

上記イラストの実際が左の写真です。

①トップボードはキャップ取付の関係で一部カットします。
②リムとヘッドブロックは蟻溝加工
③バックボードはネックヒールのキャップになります。

 
 

◆ ボディの整形

 

←トップ及びバックボードの飛び出している部分をベルトサンダーで可能な限り研磨

↓(中段)アール部分はスピンドルサンダーがピッタリ

↓(下段)渦巻き部分は面倒。写真のヤスリも余り効果なし。精密ヤスリや粗目を両面テープで小さなパレットナイフに貼付したりそれなりの工夫が必要でした。

 
 

 

ボディの整形完了!!

渦巻きの切り込み部分⇒

 

 
 

渦巻き部分の整形作業

右のポンチ絵に基づき整形します。
まず幅35㍉のリムに5㍉厚のトップとバックで44㍉、これが最小値、そして渦巻き部分の最大値を58㍉として整形していきます。

 
  渦巻き部分の稜線(ボリュート)を時々確認しながら削っていきます。
 
 


「F5モデル」の最大の特徴はこの渦巻き部分、ポンチ絵との比較はどうでしょうか?

バインディング作業時に改めて全体をチェックするので取り敢えず作業終了。