《ギター製作》

6.ボディの組立 その2 (バックボード接着)

◆ サイドとブロックの高さ調整

まず、トップボードの飛び出している部分をカットし、モールドにセットできるような形状にします。
細工ノコとペーパー掛けでトリミング終了。
   【サイドの高さ(幅)加工】
(左側)
トップボードの厚みを含めて、ネック側83ミリ、テール側103ミリの段差をアール形状で罫書し、写真のようにテープ表示します。
(下2枚)
テープに従い、細工ノコでマージンを残しながらカットしていきます。
   【ネックブロック処理】
(左)
例の勘違いから上辺が追加されたブロック
(下2枚)
サイド上辺はカンナを使用、ブロック部はやヤスリで削っていきます。
   【テールブロック処理】
(左)
本来は100ミリだったのを勘違いから110ミリで加工してしまったブロック
(下2枚)
ギリギリまで細工ノコで切ってからヤスリで仕上げました。
最後に、ネック側の角度をチェックしておきます。ネックを接合する部分なのでトップボードに対し90度であることが必要です。

◆ ライニング接着と平面出し

トップボード同様の手順でライニングを接着します。
(左)
トップボード同様、長尺やすりで丁寧にサンディング
(左下)
ヘッドブロックとサイド面は同じ傾斜(アール)になるようにサンディングします。
(下)
サンディング終了
  【サイドの割れ止めor筋交い】
(左)
トーンバーを兼ねたブレース6個
(左下)
左右6ヵ所に接着します。
(下)
出来上がり・・・・
   【トップボードの順反り!】
実は接着時、ボードの「反り」に気が付き何度か矯正するも効果なく、トップを剥がすこととしました。
サイドが「平ら」でなかったことが原因。
以下、トラブルシューティング・・・・

◆ 順反りの矯正(ダメでした!)

トップボード接着直後の矯正(一回目)
バック側ライニング接着時の矯正(二回目)

一時的に改善するも接着面のゆがみが解消されない限り矯正はやはり無理・・・

◆ 新たなインナーの作成

サイドのサンディングが失敗した理由の一つは、モールドセッティングが不適切だったことです。

従ってサイドがモールドに正しくセットできるようウクレレ製作と同じように、
①サイドを面で支える底板
②底上げインナー
を急きょ作成。

上記のインナーをモールドにセットした写真

下の底板ごとクランピングするのでサイド端にかかる負荷が軽減します。

◆ トップボードを剥がす

アイロン、濡れ雑巾、パレットナイフを使用する力作業。およそ40分ほど・・・

写真のようにトップボードは思ったより損傷してしまいました。どこまで修復できるか?

◆ サイドの平面出し

サイドを平らなボード上に置いて見ると、中央部に3ミリ弱の隙間がハッキリと・・・
  【サンディングによる平面出し】
(左)
ボディのくびれ部分を固定することで実際の反りを反映させます。
(左下と下)
ボディ全体がサンディング出来るよう#80を作業ボードに貼り付けます。
サイド中央部の削り過ぎの是正なので、写真のように両ブロック部が研磨されることになります。
  【中央部の隙間是正】
(A)
サンディング前の状態
(B)
サンディング途中、隙間が少なくなっています。
(C)
隙間が無くなりました。
トップボードを仮固定し、表面がフラットであることを確認・・・

◆ トップボード損傷部分の補修

  【主な損傷状態】
4か所ほど補修が必要であった。ヘッドブロック部はナイフがトップ材の中に入ってしまったための損傷・・・・
加えてブレースとサイドの交差部分の損傷、この部分は剥がすのが難しい・・・・

作業は低粘度アロンで剥がれた箇所を修復。

 【修復作業完了】
ヘッドブロック部分は損傷が激しいですが、強度的には問題ないと思われます。
ボードの一部に「反り」が生じていたのでクランピングで矯正・・・
念のため竹棒デッキで一晩・・・・

◆ トップボードの再接合

トップボードに「遊び(マージン)」がないためその接合方法に悩む・・・・
要は正確な接合ということだが、モールド固定で果たして大丈夫なのか?
それともモールドなしで接合出来るのか?
ギター用の「スプールクランプ」が多少手元にあるので、試しに写真の作業を実施してみる。

マージンのないトップをサイドにぴったり合わせながら一つ一つ締めていくのだが、ぴったりと合体させるアイデアが浮かんでこない・・
それにこのクランプをあと25個程度新たに作らないといけないし・・・無理です。
  【モールド使用時の準備】
(左)
インナーモールドを使用するためサイド割れ止めを取り除きます。⇒やり直し
(左下)
バック側はアール加工されているため、ヘッド側から9個の木片を傾斜させてセット、これで垂直にクランプが機能します。
(下)
インナーモールドで内側からボディ形状を調整、トップボードに出来るだけフィットさせます。
トップボードをセットし、サイド形状とぴったり合うまで、インナーの微調整、あるいはモールドとサイドの間に木片を挿入したり工夫しつつ調整。

調整後のドライクランピング・・・・
  【接合】
(左)
ボンドを塗った・・・・・もう戻れない・・
(左下)
クランピング・・・・
(下)
①赤丸の木片を差し込みボードとサイドを調整
②矢印のボードでクランピングが格段に安定、最初からやるべきだった・・・
【トップボード接合結果】
(左)
表面順反りは矯正出来たものと判断。
(左下)
マージンのない接着結果は写真の通り1ミリ~2ミリほどのズレが発生、作業精度を考えると合格です。
(下)
トップの飛び出している部分をトリミング、表面も#240でサンディング・・・

トップボードの主な損傷部分、しっかりと接着されました。

◆ 割れ止め再加工

やっと元に戻りました。

◆ ドライ・クランピング

(左と左下)
ようやくon track、まずボード接合部の補強パーツのブロック接触部分をカット。
(下)
ブレースがサイドと交差する溝(8ヵ所)を加工してからドライクランピング、バックはアールがあるのでクランピング手順に注意、ブロック部分からスタートするのが基本。
パレットナイフで接合部に隙間がないことを必ず確認します。

◆ バックボード接合

(左)
クランピング本番
(左下)
この場所でクランピング中「ベキッ」という音!
何か割れたような・・・・
(下)
翌日クランプを全て取り除きました。
(左写真)
モールドから取り出し
(左下)
トップ側からの写真
(下写真)
バックボードの余分な部分をカットします。

【飛び出し部のトリミング終了】

【順反りチェック】

ブリッジ後方に若干隙間がありますが良しとします。
【ベキッのチェック】
案の定、ブレースに割れが発生・・・
ブレースとサイドの交差位置でのブレース厚は1ミリとしているが、位置が内側にずれていたためブレース材3ミリ厚の部分で交差。
結果、クランプの力に耐えられずに割れたということか・・・・
念のためトップとサイドの角度をチェック。本来は90度だが写真のようにバック側に隙間あり。
モールド固定の作業でしたが、バックボード接合時にはインナーが使用できないためサイドの「向き」が内側に寄っていたことが原因。

接合後サウンドホールから取り出せるインナー(ウエスト部分)を検討するかインナーを必要としない十分なベンディング・・・・

【サウンドホールから取り出せるインナー】
2枚の板を利用しウエスト部分を内側から矯正、2枚の板は紐で固定しておく。
バック接合後、紐を外すことで2枚の板をサウンドホールから取り出すことが可能。

改めてサンディング(#180)
OOサイズは実にいい形、ストライプの入ったローズウッドのバックもいいですね。
ボディの厚みを計測。ネック側で「84.5ミリ」、テール側で「108ミリ」でした。

次はネックです。